シリーズ第一回に続いて、特定技能の「制度見直し及び制度運用見直しに関する報告」という報告書をテーマに、登録支援機関(株式会社ジンザイベース)の経営をなさっている中村さんに、率直なご意見をお伺いしていきます。今回の大枠のテーマとしては、「登録支援機関の適正な活用に向けて」というテーマとなっております。なお、前回の記事に関しては、こちらからご確認いただけますので、ぜひあわせてご覧ください。
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登録支援機関のランク付け指標評価「案1:登録時のチェック型」
和須津:今回の大枠のテーマとしては、「登録支援機関の適正な活用に向けて」と題しまして、複数の見直しの観点が挙げられています。
全国の中小企業へヒアリングした結果、現状、登録支援機関の選定を受け入れ企業がする際に登録支援機関の情報がほとんどないというのが、課題点として上がっています。
監理団体からの継続的なお付き合いだったり、知人からの紹介に頼っている状況が伺えると。もっと安心して制度を活用するためにも、受け入れ企業のニーズに合った登録支援機関を探せるような環境を構築するべきなんじゃないか。また、登録支援機関の評価を見える化することによって、登録支援機関の質の向上へ繋げることができるんじゃないか。正直質の低い登録支援機関がたくさんあるという現状から、こういった論点が挙げられています。
具体的にどうやってランク付けするのかっていうところなんですが、現状、二つ案があるみたいです。
まずは「登録時のチェック型」。登録支援機関を登録するときにどこまで支援業務の対応ができるのか、従事者の経験年数がどれだけあるのか。また、外国人材の支援人数や分野をどこまで対応できるのかといった、その機関としての実績などの観点が想定されているそうです。
こういった観点での評価を加味した上で、登録支援機関をA・B・Cなどといった、ランク分けをするべきなんじゃないかってのが一つ挙げられています。
実際どうですかこれってどうなんですかね。現実的なんですかね?
中村:いやぁ、難しいんじゃないかなとは思いますね。
基本的に今、皆さんがじゃあどこの登録支援機関を使おうかと探すときって、ネットで検索して選んでいくと思うんです。そこで評価が高いところがあったとして、そこをそれ以上調べることができる企業なのかどうかにもよって変わってくると思うんですよね。そこにしか情報がない。でも評価が高いってところだったときに、果たしてと。だからWebにおけるブランディングがイコールじゃないと厳しいんじゃないかなと思いますね。
単純にランク分けして公開しただけで得られる情報を知ったからって高が知れていると思うんですよね。例えば、有料職業紹介とか弁護士などのいろんな資格も含めて、ネットで探せば登録されてる情報って探すことができますよね。最寄りのところも含めて。でも多分ほとんどの会社さんとか個人って選ばないと思うんですよね。
結局Webで広く認知されてるようなところが優先順位としては高く上がってくるのかなとは思いますね。
和須津:結局そうですよね。受け入れ企業側の行動としてはそうなっていきますよね。
一応、半年から1年程度のスパンで調査をして、そこで過去の実績等に応じて等級を随時入れ替えていくみたいですね。
中村:そこの定義にもよるんじゃないかなとは思いますね。
和須津:そうですね。ここの区分けが今後どうなっていくのか注目が必要ですね。
登録支援機関のランク付け指標評価「案2:パフォーマンス判断型」
和須津:もう一つ案がありまして、こっちは「パフォーマンス判断型」。外形的な指標を定めて、1年単位で情報更新し、それを開示していくと。
内容としては一つ目の案と似てるようなところであるんですが、どれだけ登録支援機関として支援人数がいるのか。かつその分野別、それぞれ何人いるのか、支援委託費用をどれだけ取っているのか、その登録支援機関自体にどれだけ従業員がいて、対応できる言語はどれだけあるのかみたいなところを判断して指標として見える化していくと。
中村:それもやばいですよね。要は大手が勝つっていうモデルですよね。
でも、結局サービスって多岐にわたっていけば、いいサービスを受けられるオプションをたくさんつける、結果として単価は上がるっていうとこで、満足度は別に比例しないですよね。今のこの視点の中で、その会社としての規模感、人数がたくさんいて、利益が出てないとか、会社としてうまくいってるかどうかっていうところはまた全然別の話だったりすると思うんですよね。
なんか、こっちはより難しいんじゃないかなと感じちゃいますけどね。価格が高ければいいわけじゃないですし、安くてもいいわけじゃないですし。それで各社の戦略や方針があった上で、そこを求める顧客があるとそれぞれが紐づくってとこで、それが良い悪いとかとは、またちょっと次元は違うんじゃないかなと思います。実際その価格とかもBtoBなんで、競合がいたら多少値段下げたりもするでしょうし。
いずれにしろ、顧客に満足されない、認められない、変なことするみたいな問題を起こすような登録支援機関ってのは淘汰されていくと思うんですよね。今7,000社近く登録支援機関ってある中で、真面目に活動しているところはほんの一部で、それ以外にはもうなかなか顧客から選ばれないとこも増えてきてるとは思うんですよ。
なので、自然淘汰されていくんじゃないかなとは思いますけどね。
和須津:確かに、実際僕たちにも、支援機関変更したいんですって依頼結構ありますよね。
中村:そうですね。結構多いですね。
和須津:そういった形で自然に適正化されていくような気もしなくもないですね。
中村:やっぱり一生懸命伸ばしていきたいとか、よりその影響を与えていきたいってところは、頑張って営業もするでしょうし、そうなったときに健全な競争ってのがより大きくなるんじゃないかなとは思います。それが最終的に顧客に還元されていくものだと思うので、余計なことはせずにもうちょっと中長期的に状況を見ていくっていう形、温かく見守っていただければなというふうには思います。
もしやるのであれば、技法実習制度の方に、ぜひどんどんとメスを入れてもらった方がいいんじゃないかな。あそこはもう競争ができないようなモデルになってると思うので、せめて株式会社が同じことができるってなるとまたちょっと変わるかなと思いますね。
和須津:確かにそうですよね、監理団体の許可を取るハードルはかなり高いですよね。登録支援機関だと、株式会社で登録できちゃうんで。
自治体が関与する形での地域の登録支援機関の管理・見える化
和須津:あともう一つ、登録支援機関のランク付け指標評価とは別軸で「自治体が関与する形での地域の登録支援機関を見える化」すべきなんじゃないか、という案もあったりします。
自治体が主導した形での、優良な人材仲介事業者を通じた人材紹介等の取り組みが実際見られると。自治体が関与する形であれば、そういった優良な登録支援機関を可視化するようなスキームが構築できるんじゃないか、というような内容になっています。
中村:そこも難しいなと思うのは、自治体がその地域の企業をチェックする、その地域の顧客に対してサービスを提供してる登録支援機関がどうなのかっていうのを見るって話だと思います。
しかし、その地域内において登録支援機関に求められることの一つとして、「人の提供」があると思うんですよ。人材がいて、紹介ができればいいんですけど、やはり田舎の地域とかになってくると難しいところも出てきたりすると思うので、そのときに地域にこだわらないというか、その地域以外も含めた上じゃないと集めれない登録支援機関も出てきたりすると思うんですよ。
そうなると、そこのチェックは他の地域(自治体)がやるという形なってくると思うので、地域別っていうのはその地域にいる企業がその地域の登録支援機関を使うことのみが制度として設けられてるんであればありだと思うんですけど、実態としては全然そんなことはないので、難しいんじゃないかなと思いますね。
それなりの一長一短あると思うんですけど、結構難しいし、非現実的なのかなとは思いますね。なんとなくうまくいくイメージがわかないですね。
和須津:でも実際にあるみたいですね。神戸市などでは、高度外国人材の紹介派遣が豊富な人材会社と協定を締結し、市内の企業向けに情報提供を行っていると。
中村:それは、各市区町村で予算があって、その地域の企業とかに向けて何かしらマッチングとか斡旋をするっていうので、コンペを勝ち残っていった人材系の会社がその事業をやってるってだけの話で、別にその地域の会社じゃないことは全然大いにあると思うんですよね。
営業が得意で、いろんな情報をキャッチアップする能力が優れた会社がそこをやってるだけですよ。東京都とかでもパソナさんが、企業を集めて展示会やったりとか、そういう外国人を雇用促進するようなイベントをやってますけど、これも東京都の協賛ですからね。
登録支援機関の活用例等の見える化
和須津:最後に、また別軸で、「登録支援機関の活用例等の見える化」という議論があります。登録支援機関を利用している企業の中で、そのうち6割が全部委託となっています。
そんな中で受け入れ企業は、登録支援機関を利用しなければいけないものという認識を持つ事業者もあったと。そういった中で全部委託の慣例化を断ち切るためにも、登録支援機関が必要な部分のみ委託すると、そういった活用事例等についても積極的に情報を共有していくと。受け入れ企業に対して正しい支援内容を選択できるような環境を整えていく。
中村:それはいいんじゃないですかね。
和須津:僕らもやっていきたいですよね。
中村:やはり選んでいけばいいと思いますし、そういう情報は全然共有されたとしても全く問題ないかなとは思いますね。
ただ、あんまり選ばないんじゃないかなと。結局面倒くさいからやってって話して、自分たち別にやればできる話だとしても、そのための新しいの情報収集やある程度の理解や書類作成とかってのも発生してきたりするので、それが面倒臭いから任せてるっていうとこがほとんどだと思うんですよね。
結局いろんなほとんど士業の仕事も含めて、やろうと思った自分でできることがほぼだと思うんですよね。でも、面倒臭いじゃないですか。またそこを勉強したりとかして把握をしていくと、だからそこの時間を買うって形で使ってる企業も多いんじゃないかなとは思うんですね。
和須津:確かにそうですよね。そういったニーズがあるからこそ6割、全部委託なのかもしれないですよね。
中村:そうですね。
いや本当に、何も考えてない可能性あるじゃないですか。今のその指針って要は受け入れ企業が本当に馬鹿だから、提案を受けたときに、何にも知らず、情報を集めずに、言われてることだけを全て正だと思った上で進んでいる状況だというふうな認識を、お上はしてるってことですよね。
和須津:もうちょっと実態を深堀した方がいいかもしれないですね。
中村:別にGoogle叩けば、いくらでも情報出てくるじゃないですか。内製化がどうだとか。
和須津:確かに、特定技能の支援を内製化している会社もあったりしますもんね。登録支援機関なしで、自社でできるような体制をコンサルするご支援を以前僕たちもやったこともありますし。
中村:そういった事例が逆に増えていけばいいのかもしれないですね。情報提供自体はいいと思いますし。
編集後記
今回は、特定技能制度の見直し審議、特に今議論が白熱している「登録支援機関の適正化」をテーマに、登録支援機関の経営者に意見をお伺いしてきました。まだまだ課題点が多く、他にも議論されているテーマがございますので、後のシリーズ公開をお楽しみにください。なお、YouTubeでもご覧いただけますので、続きが気になる方はぜひこちらからご覧ください。
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