特定技能で実施する、「生活オリエンテーション」ってなに?
特定技能における生活オリエンテーションの具体的な内容に入る前に、まず生活オリエンテーションとは何なのかについて、概要をお話していきます。
雇用した1号特定技能外国人(以下、特定技能外国人)に対しては、支援計画を策定した上で、その計画に基づいた様々な支援を実施していく必要があります。
この支援については、「義務的支援」と「任意的支援」の2つの種類が存在し、「義務的支援」に関してはその名の通り、特定技能外国人の受け入れ後、必ず実施しなければなりません。
「生活オリエンテーション」は、その義務的支援の一つとなっており、特定技能外国人が入社した後に行う情報提供のことを指します。
雇用した特定技能外国人が、日本での職業生活や日常生活、社会生活を安定的かつ円滑に行えるようにすることを目的としており、実施タイミングとしては、入国もしくは在留許可後、遅滞なく実施する必要があるとされています。
よく「生活オリエンテーション」と「事前ガイダンス」を混同されている方もいらっしゃいますが、両者は別物になっていますので、ご留意ください。
なお、特定技能制度の基本的な概要について知りたい方は、「特定技能とは?制度の概要から採用の流れまで基本を徹底解説」をご覧ください。
「生活オリエンテーション」の実施方法は?
この「生活オリエンテーション」の実施方法ですが、テレビ電話や動画視聴によって実施することも可能です。
ただし、特定技能外国人からの質問や問い合わせに関して対応できるように、連絡が取れる体制は構築しておく必要があります。
もちろん、特定技能外国人がしっかりと理解できる言語で実施する必要があるので、母国語で対応できる体制等の構築も検討しなければなりません。
「生活オリエンテーション」の実施時間は?
特定技能外国人に、提供した情報をしっかりと理解してもらうため、「生活オリエンテーション」は8時間以上実施することが求められています。
例外として、「技能実習2号修了者」や「留学生」等を同一機関で引き続き特定技能外国人として雇用するような場合は、生活環境が変化しないため、4時間程度の実施でも構わないとされています。
ただし、特定技能外国人が他社へ転職したような場合であったとしても、新しい受け入れ機関に入社した後、再度生活オリエンテーションを実施しなければなりません。
実施後に書類の提出などの手続きはある?
生活オリエンテーション実施後は、「生活オリエンテーションの確認書(参考様式5-8号)」を特定技能外国人の署名を得た上で記録しておく必要があります。
書類に関しては、特定技能所属機関(受け入れ企業)で保管しておくようにしましょう。なお、登録支援機関に支援を委託していた場合は、登録支援機関が書類の作成及び保管を行うこととなります。
あくまで書類の作成・保管義務があるのみで、出入国在留管理庁への提出義務はございません。(出入国在留管理庁「特定技能所属機関からの定期届出に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」のQ38参照)
生活オリエンテーションで提供すべき情報
それではさっそく生活オリエンテーションで提供すべき情報を確認していきましょう。
今回は、出入国在留管理庁HPの「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」を参考に、解説していきます。
日本での生活一般に関する情報
まずは日本での生活一般に関する情報です。
①金融機関の利用方法
金融機関での入出金や振り込みの方法、利用可能な時間帯やATMの利用法・手数料などを説明します。
出国時に自己名義の口座が不要になるときは、口座を閉鎖する手続きを行うことなども説明する必要があります。
②医療機関の利用方法など
症状別の利用可能な医療機関の紹介や医療機関での受診方法、保険証などの必要な持参物を説明することになります。
その他、宗教やアレルギーなどの観点で、受けられる治療に制限がある場合は、その旨を医療機関に伝える必要性も説明します。
③交通ルールなど
歩行者は右側通行、車両は左側通行・歩行者優先であることといった日本における交通ルールを解説します。
他にも自転車運転時には自転車の損害賠償責任保険の加入をする必要性や、自動車やバイクを運転する際は免許が必要であることなどを説明しましょう。
④交通機関の利用方法など
就労・生活する地域の公共交通機関やその利用方法、勤務先までの経路及び所要時間などを説明します。
特に通勤に最適な公共交通機関や、通勤定期券・ICカードの購入・利用方法の説明が必要になります。
⑤生活ルール・マナー
就労・生活する地域におけるゴミの廃棄方法、近隣住民に迷惑になる行為は控えることなどを説明しましょう。
その他空き地や畑に無断で入ることは避けること、喫煙には一定の制限があることなども併せて説明すると良いでしょう。
⑥生活必需品などの購入方法
就労・生活する地域にあるスーパーマーケットやコンビニ、ドラッグストアなどの所在地も伝えるようにしましょう。
他にも日常生活に必要な家電類を購入できる家電量販店の所在地も併せて説明すると安心です。
⑦気象情報や災害時に行政などから提供される災害情報の入手方法
行政などから提供される、気象情報や災害情報などを入手できるサイトやアプリなどを紹介します。
その他特定技能外国人の母国のコミュニティサイトなどがあれば、併せて紹介しておくと良いでしょう。
⑧日本で違法となる行為の例
銃や刀剣類の所持が禁止されていることや、大麻や覚せい剤などの違法薬物の所持も犯罪であることを解説します。
その他、在留カードに関しても不携帯は罰則対象になることや、貸し借りなどは禁止されていることを説明しましょう。
公的機関に対する手続きに関する情報
続いては公的機関に対する手続きに関する情報です。
①所属機関(受け入れ企業)に関する届け出
受け入れ企業の名称や所在地の変更または消滅した場合、および受け入れ企業との契約が終了または新たな契約の締結をした場合に、所属機関に関する届け出を行う必要がある旨を説明しましょう。
②住居地に関する届け出
新規上陸後の住居地届出や在留資格変更などに伴う住居地の届出、住居地の変更届出について説明します。
③社会保険及び税に関する手続き
社会保険に関する手続き
健康保険及び厚生年金保険に関する手続きや制度、特に保険料が給与から天引きされることについて解説します。
未納がある場合には、在留申請が不許可になる場合があることや、離職時は国民健康保険や国民年金に関する手続きなどについての説明も必要です。
税に関する手続き
源泉徴収・特別徴収の制度についても、社会保険と同様に給与から天引きされることなどを説明しましょう。
その他、未納時は在留申請が不許可になる場合があることや、住民税納付の仕組みなどもしっかりと説明する必要があります。
その他
マイナンバー制度の仕組みなども説明することが求められます。
④その他の行政手続き
その他の行政上の手続きとして、自転車を利用する際の自転車防犯登録の方法などの解説が必要になります。
店頭又はオンラインで購入した場合、誰かから譲り受けた場合の登録方法や、盗難・撤去された場合の対応などもあわせて解説しておきましょう。
支援に関する情報
続いては支援に関する情報です。
①登録支援機関に支援を委託した場合の情報提供
特定技能外国人への支援を登録支援機関に委託した場合、登録支援機関における相談又は苦情申し出の対応をすることとなっている者の連絡先を通知します。
具体的には「支援担当者の氏名」「支援担当者の電話番号・メールアドレス」などを通知しましょう。
②相談又は苦情申し出をすることができる公的機関の連絡先
具体的には
- 地方出入国在留管理庁
- 労働基準監督署
- ハローワーク
- 警察署
- 最寄りの市区町村
などの連絡先を通知します。
それぞれどのようなケースで相談可能なのかも併せて説明する必要があるでしょう。
医療や医療機関に関する情報
続いては医療や医療機関に関する情報です。
通訳が配置されている、あるいはインターネットや電話による医療機関向け通訳サービスが導入されているなど、外国人患者の受け入れ体制が整備されている医療機関の名称や所在地、連絡先などを提供しましょう。
また安心して医療サービスを受けることができるように、医療通訳雇い入れ費用などをカバーできる民間医療保険の案内も実施すると安心と言えます。
防災・防犯などに関する情報
次に挙げられる内容は防災・防犯に関する情報です。
地震や津波、台風などの自然災害への対応方法や身を守るための手段などを説明します。
タバコの不始末や、コンロ・ストーブの取り扱いといった火災予防なども併せて説明する必要があるでしょう。
また緊急時の連絡先として、110番や119番、大使館・領事館、警察署や医療機関などの連絡先や連絡方法も通知しておくと安心です。
その他、気象情報や避難指示・勧告の把握方法なども説明する必要があります。
法令違反の対応や法的保護に必要な事項
最後は法令違反の対応や法的保護に必要な事項です。
入管法令や労働関係法令に関する知識を提供した上で、それらに違反がある場合の相談先や連絡先を通知する必要があります。
その他、特定技能雇用契約に違反があった場合の相談先・連絡先や、年金受給に関する相談先や連絡方法なども併せて解説しましょう。
生活オリエンテーションを実施する際の注意点
続いて生活オリエンテーションを実施する際の注意点についてご紹介します。
注意点①:特定技能外国人が十分に理解できる言語で実施する
生活オリエンテーションで提供する情報は、日本で働いて生活していく上で欠かせない情報ですので、しっかりと理解してもらう必要があります。
そのため簡単な日本語で話すことは勿論、必要に応じて母国語やその他当該外国人が理解できる言語にて実施する必要があります。
注意点②:必要に応じて手続きなどに同行する
公的機関への各種届出においては、説明するだけでなく、必要に応じて関係窓口に同行した上で、書類作成や手続きの補助をすることが求められています。
特に離職時の国民健康保険や国民年金の手続きについては、同行することが望ましいとされているので、留意しておきましょう。
生活オリエンテーションを確実、且つ効果的に行うには
今回説明してきた生活オリエンテーションですが、特に資料等が出入国在留管理庁などから指定されているわけではないため、受け入れ機関が独自に作成した資料や動画コンテンツを展開しながら実施されるケースが大半かと思います。
一方で、出入国在留管理庁「外国人生活支援ポータルサイト」上に、「生活・仕事ガイドブック」が公開されています。
各国語で、資料や動画コンテンツにて日本での生活情報について、注意事項等が取りまとめられていますので、自社で実施される企業様に関しては、ぜひ参考・ご活用してみてください。
自社で実施するリソースがない場合は、登録支援機関への委託がオススメ
一方で、自社で4時間や8時間の時間をかけて、生活オリエンテーションを実施するための時間がないという場合は、登録支援機関への委託がオススメです。
生活オリエンテーションの実施のみならず、公的機関への手続き同行や定期面談の実施・報告など、その他の支援業務についても一括して委託することが可能です。(もちろん、一定の条件はありますが、一部委託することも可能です。)
そのため登録支援機関へ委託することが望ましいと言えます。
登録支援機関とは
登録支援機関とは、生活オリエンテーション含めた支援業務を代行してくれる機関です。
支援業務自体の代行は勿論のこと、支援計画の策定や在留申請の手続きに至るまで、特定技能外国人受け入れ全般をサポートしてくれます。
そのため受け入れ企業は、受け入れ体制の構築や業務指導の準備などといった受け入れ企業にしかできない業務に集中することができ、結果として特定技能外国人もより安定的に就業することができるようになるのです。
登録支援機関については、「【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説」でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
委託する際の費用や注意点
登録支援機関に支援を委託した場合の費用は、委託する範囲によって前後はしますが、おおよそ2〜3万円/月程度掛かってくる形になります。
委託しなければ外部コストはかかりませんが、支援業務を担当する人材の確保やそれに係る人件費などを踏まえると、決して高くないコストと言えるでしょう。
登録支援機関に委託する場合の注意点として、法務省の登録があるかどうかや対応可能言語などを確認することが挙げられます。
特定技能受け入れにかかる費用に関しては、「【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介」の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
今回は特定技能外国人に対する支援の内、生活オリエンテーションをテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。
当社は特定技能における登録支援機関として活動しており、生活オリエンテーションをはじめとした支援業務の代行サービスなどを提供しております。
また特定技能外国人の紹介なども行っているため、採用から支援、就業開始後の定着に至るまで一貫したサポートが可能です。
特定技能外国人の雇用を検討されている方は、是非こちらのフォームからお気軽にお問い合わせください。