【意外な落とし穴?】技能実習から特定技能へ移行するための手続き・注意点は?

この記事では、「技能実習」から「特定技能」へ移行をするための手続きや注意点をテーマに解説をしていきます。特定技能ビザでの外国人の雇用を検討したい方や、既に外国人の雇用をされている方もぜひ最後までご覧ください。

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「技能実習」と「特定技能」についておさらい

まずはじめに、「技能実習制度」と「特定技能制度」がそれぞれどのようなものかをおさらいします。

「技能実習」とは?

技能実習制度とは、開発途上地域を中心とした外国から技能実習生を迎え、母国では習得が困難な日本で培われた技能、技術、知識を移転することで、その国の経済・技術発展を担う「人づくり」に貢献することを目的とした制度です。

この制度に基づき発行される在留資格は「技能実習」で、国際貢献という制度趣旨から、この在留資格を有する技能実習生は「労働者」よりも「研修生」としての側面が強くなっています。

この技能実習生は、建設、製造、農業などの特定の業種(90職種165作業)で1年から最大5年間働くことが可能です。

2023年6月末時点で、日本に在留する外国人322万3858人のうち、約11.1%の35万8159人を技能実習生が占めており、国別で見ると、ベトナムが最も多く、次いでインドネシア、フィリピンの順になっています。

また、他の就労ビザと異なり、受け入れ方法にも特徴があるため、技能実習制度についての詳細を知りたい方は「技能実習生って問題だらけ?制度や受け入れ方法について徹底解説!」の記事をご覧ください。

「特定技能」とは?

特定技能制度は、日本の労働力不足への対策として、特定産業分野の12分野14業種で、外国人労働者の受け入れを促進することを目的に2019年4月に導入された制度のことを指しています。

この制度に基づき発行される在留資格は「特定技能」で、人手不足が著しい14の特定の分野において一定の技能と日本語能力を有する労働者に対して発行されます。

この特定技能制度により、これまで「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザでは従事できなかった、例えば、外食業・建設業・農業・宿泊業・製造業などの単純労働を含む作業に従事させることが可能になりました。

この在留資格は、特定技能1号と特定技能2号という2つの区分が存在し、特定技能1号は最大5年間の滞在が可能、特定技能2号はより高度な技能を有する者に与えられ、在留期限の制限もなく家族の帯同も認められています。

この特定技能ビザを持つ外国人は、2023年6月末時点で、全在留外国人の約5.4%にあたる17万3089人で、国別ではベトナムが最も多く、次いでインドネシア、中国の順になっています。

特定技能制度についての詳細を知りたい方は「在留資格「特定技能」とは?技能実習との違いも含めてわかりやすく解説!」の記事も併せてご覧ください。

「技能実習」と「特定技能」の違い・比較

次に、それぞれの制度の違いについて見ていきます。

技能実習制度と特定技能制度の主な違いは、それぞれの目的対象となる労働市場です。

技能実習制度は技能の伝達と国際貢献に重点を置いているのに対し、特定技能制度は日本の労働市場の需要に応じて外国人労働者を受け入れることを目的としています。

また、技能実習制度は一定の期間後に帰国を前提としているのに対し、特定技能制度ではより長期的な雇用が可能です。

表にすると以下の通りです。

技能実習特定技能
設立の目的技能移転による国際貢献国内の人手不足の解消
就業可能な業種・職種90職種・165作業12分野14業種
滞在可能な在留期間最大5年間1号:最大5年間2号:制限なし
受入れ人数制限常勤職員数に応じて制限あり制限なし(介護、建設除く)
家族帯同不可1号:不可2号:配偶者と子に限り可能
転職可否原則不可可能
受入れ方法送出し機関を通じて海外から呼び寄せる決まりはない
関与団体送出し機関、監理団体登録支援機関(自社で支援が可能な場合は不要)

双方のより詳細な違いについては、「【特定技能と技能実習】8つの違いとメリット/デメリットを徹底解説!」をぜひ合わせてご覧ください。

「技能実習」から「特定技能」へ移行ってできるの?

前項で技能実習と特定技能の違いについて触れましたが、実は、技能実習⇒特定技能へ在留資格を変更することも可能です。それについて以下にて見ていきます。

移行するための条件を満たす必要あり

「技能実習」から「特定技能」への在留資格の変更は、一定の条件を満たすことで可能です。

これにより技能実習生は日本で培った技能を基に、特定技能ビザを取得して更に専門的な職種で働く機会を得ることができますが、満たすべき条件としては以下の通りです。

  1. 技能実習2号を良好に修了していること
  2. 技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること

こちらの2点を満たしていれば、特定技能の技能試験と日本語試験が免除され、②を満たしていない場合でも①を満たしていれば日本語試験が免除されます。これらの要件は、技能実習生が特定技能の職種において、即戦力で働けるかどうかを判断するものになっています。

対象職種の制限に気をつけましょう

前述の移行条件を満たしていても、そもそも特定技能にて許可されている12分野でないと移行はできません。

特定技能で受け入れ可能な12業種一覧

また、技能実習2号対象職種でも特定技能には該当がない職種や作業があるのでご注意ください。

技能実習の職種とそれに該当する特定技能の一覧は以下の資料よりご確認ください。

参考:技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係について(1/4)

技能実習から特定技能への移行は、適切な条件を満たすことで、技能実習生にとって新たな機会を提供し、彼らの日本でのキャリアをさらに発展させることが可能となるでしょう。

移行する際の具体的な手続き・必要書類は?

ここからは、技能実習から特定技能へ移行する際の手続きの方法や必要な書類などを詳しく見ていきます。

移行の手続き方法と必要書類は?

技能実習から特定技能への在留資格変更は出入国在留管理庁の審査が必要です。ただ、特定技能の申請の場合と基本的には同様で、大まかには以下のような流れになります。

1.対象の外国人と雇用契約締結

2.特定技能外国人の支援計画策定(または、登録支援機関と委託契約締結)

3.事前ガイダンス実施、健康診断受診

4.分野ごとの上乗せ基準、国ごとの手続きがあれば事前申請

5.「在留資格変更許可」の申請

申請先は、管轄の地方出入国在留管理局・支局で、主に提出する書類は以下の通りです。

  • 在留資格変更許可申請書
  • 特定技能外国人の報酬に関する説明書
  • 特定技能雇用契約書の写し
  • 雇用条件書の写し
  • 事前ガイダンスの確認書
  • 支払費用の同意書及び費用明細書
  • 徴収費用の説明書
  • 特定技能外国人の履歴書
  • 技能水準/日本語能力水準を証明する資料(技能実習計画書の写し、各試験の合格証など)
  • 技能実習2号修了に関する評価調書
  • 健康診断個人票
  • 通算在留期間に係る誓約書・・・など

こちらは必要書類の一部ですので、詳細は「「特定技能(1号)」への在留資格変更許可申請に係る提出書類一覧」をご確認ください。

在留期間によっては、特例措置「特定活動」を申請する

前述の通り、申請のために用意する書類が多いため、十分な準備期間をもって申請する必要があります。

しかし、在留期間の満了日までに申請に必要な書類を揃えることができないなど、移行のための準備に時間を要する場合には、一度「特定活動(6月・就労可)」という在留資格への変更をする特定措置があります。

これにより、「特定技能1号」で就労を予定している受入れ機関(企業)で就労しながら移行のための準備を行うことが可能です。

この特例措置の要件は以下の通りです。

  • 申請人の在留期間の満了日までに「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行うことが困難である合理的な理由があること
  • 申請に係る受入れ機関において特定技能外国人として在留資格「特定技能1号」に該当する業務に従事するために同在留資格への在留資格変更許可申請を予定していること
  • 申請人が申請に係る受入れ機関との契約に基づいて在留資格「特定技能1号」で従事する予定の業務と同様の業務に従事すること
  • 申請人が特定技能外国人として就労する場合に支払われる予定の報酬と同額であり、かつ、日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること(※技能実習2号良好修了者等として試験免除となる場合も含む)
  • 申請に係る受入れ機関又は支援委託予定先が申請人の在留中の日常生活等に係る支援を適切に行うことが見込まれること
  • 申請に係る受入れ機関が、申請人を適正に受け入れることが見込まれること

この特例措置の詳細については、出入国在留管理庁のWEBサイト(「特定技能1号」への移行を希望する場合)をご覧ください。

特定技能の許可が降りるまでどのくらいの期間かかる?

特定技能への移行の期間に関しては、書類に不備がなく申請が受理されれば、おおよそ2〜3ヶ月で承認がおりるでしょう。

しかし、準備する書類が多いことや、申請前に特定技能外国人の支援を委託する登録支援機関とのやり取り、受入れ機関としての要件を満たすための社内整備なども必要なため、それらの前準備も考えれば3~4ヶ月程度の時間は見ておくべきでしょう。

前述の特例措置もありますが、在留期限日がくる前に申請しなかった場合、技能実習生は一時帰国しなくてはいけません。

帰国後に特定技能ビザの取得することも可能ですが、その場合は、在留資格認定証明書交付申請となるため審査・承認まではより長い期間を要する可能性が高いです。

そのため、技能実習から特定技能への移行は、在留期限をしっかり確認した上で、余裕をもって準備・申請をするようにしましょう。

組合が登録支援機関の許可を取得していない場合

特定技能の在留資格で外国人を雇用する場合は、様々な義務的支援をする必要があります。

過去に特定技能外国人の雇用経験があり、要件を満たせば自社でも支援は可能ですが、一般的には、登録支援機関に支援を委託します。

技能実習から特定技能への移行をする場合も同様ですが、技能実習の監理団体が登録支援機関の許可を取得していない場合は、新たに委託をする登録支援機関を探す必要があります。

もし、お付き合いのある監理団体が登録支援機関を取得していなければ、お気軽に当社にお問い合わせください。約10万人のデータベースから、最短2週間で人材をご紹介できます。

また、監理団体が登録支援機関を兼ねている場合であっても、別の登録支援機関に切り替えは可能です。もし、対応や費用面などで新たな登録支援機関をお探しであれば是非当社へお問い合わせください。

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特定技能へ切り替えるための費用は?

技能実習から特定技能への移行でかかる費用について見ていきましょう。

特定技能への移行に関しては、具体的に以下の費用がかかります。

  • 在留資格変更の申請費用
  • 特例措置で特定活動に切り替える場合、その申請費用
  • 特定技能移行後の支援委託費用(毎月)
  • 特定技能での在留期間更新費用(毎年)
  • ベトナム人の場合、推薦者表(特定技能外国人表)の取得費用

基本的には、移行に関わらず、特定技能外国人を雇用する場合の費用のみと考えてください。

そのため、

  • 技能実習2号から3号移行前の一時帰国
  • 一時帰国の際の渡航費負担
  • 技能検定3級または技能実習評価試験の実技試験に合格
  • 送り出し機関への管理費

のような、技能実習2号から3号への切替の際の対応や費用は不要です。

特定技能へ切り替える際の注意点

最後に、技能実習から特定技能へ移行をする際の注意点について見ていきます。

特定技能に対応していない職種あり

先ほど触れた通り、技能実習で認められている90職種165作業の中には、特定技能に対応(該当)していない職種があるので注意が必要です。

例をいくつかあげると以下の通りです。

  • 建設分野
    さく井 、建具製作 、石材施工 、タイル張り…など
  • 繊維・衣服関係
    13職種22作業すべて
  • その他
    家具製作、印刷、製本、強化プラスチック成形、紙器・段ボール箱製造 、陶磁器工業製品製造、リネンサプライ、コンクリート製品製造…など

技能実習からの移行において、特定技能で該当がない職種・作業の場合は、改めて特定技能の分野ごとの技能試験に合格する必要がありますのでご注意ください。

送り出し管理費や監理費をそのまま払い続けている

技能実習制度において外国人を雇用する場合、母国の送り出し機関へ監理団体を介して『送り出し管理費』の名目で月額費用を支払っているかと思います。

技能実習から特定技能へ移行が完了すれば、これらの費用は不要になりますが、気付かずに払い続けてしまっている企業様を稀にお見受けします。

技能実習時に間に入っている監理団体・送り出し機関をそのまま特定技能へ移行した際にも継続して活用する、というケースに比較的多い印象があります。

特定技能に移行した際には、契約内容及び見積もり、毎月の請求書については必ず確認しておいた方が良いでしょう。

建設・介護では人数制限あり

技能実習制度と異なり、特定技能制度は受入れ人数の制限がありませんが、建設・介護分野においては例外なため注意が必要です。

建設・介護分野では、受入れ機関ごとに受入れ可能な人数枠が設定されており、それぞれ以下の通りです。

  • 建設分野
    特定技能と特定活動で就労する外国人の合計が、受け入れ企業の常勤職員(外国人技能実習生、特定技能1号外国人を除く)の人数まで
  • 介護分野
    事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を上限(常勤介護職員には、EPA介護福祉士、在留資格「介護」、身分系在留資格の外国人を含めることが可能)

脱退一時金のための一時帰国を忘れずに

脱退一時金とは、日本国籍を持たない外国人が国民年金・厚生年金の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合に、「日本に住所がなくなってから2年以内」であれば、これまで日本で支払った年金保険料の一部を払い戻しできるという日本年金機構で認められた制度です。

ただ、この制度を利用し脱退一時金を取得するには、現職場を退職をし帰国をしなければならず、労使関係で揉めるケースも多々あります。

特定技能外国人がこの制度を利用し一時帰国をする場合、一度退職をし再度入国の際に在留資格を最初から取り直す必要があったり、欠員補充をしなければならなかったりと大きな手間がかかります。特に建設分野は、外国人就労管理システムに退職報告や、再入国の際に新たに建設特定技能受入計画の認定など、かなりの手間になるでしょう。

また、再入国が認められないリスクなどもゼロではありませんし、そのまま母国に留まってしまうこともあるでしょう。

上記のことから、技能実習から特定技能への移行において休職期間が長くなる場合などは、特定技能ビザでの雇用後にこの制度を利用されてしまうより、入社前にこの脱退一時金を取得のために一時帰国をしてもらう方が良いケースもあります。

せっかく雇用した外国人と脱退一時金制度で揉めないためにも、技能実習から特定技能へ移行の際には、先に脱退一時金を取得をしてもらうことも選択肢として考えておくとよいでしょう。

まとめ

今回は技能実習から特定技能への移行について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

昨今は、技能実習の制度上の問題などから、特定技能への移行を考える外国人労働者も少なくありません。外国人採用を検討する場合においても、技能実習から特定技能への移行は一つの選択肢として考えておかれると良いでしょう。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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