【外国人労働者の安全衛生教育の基本】各労災への対応ポイントや教材もご紹介

外国人労働者の労働災害の現状

労働災害とは業務に起因して発生する災害のことを指します。

業務中の事故は勿論、職場への通勤時の傷病なども労働災害に当たります。

昨今、外国人労働者の労働災害の数も、来日してくる人数に比例して増えているのです。

以下のグラフは厚生労働省が公表している労働災害発生状況の資料を基に当社が作成したものです。

休業4日以上の死傷者数(外国人労働者-技能実習生含む)
休業4日以上の死傷病者数 外国人労働者(技能実習生含む)

グラフを見てみると、2017年以降は3,000人を超え、2020年にはついに4,000人を超えていることがわかります。

日本人の休業4日以上の死傷病者数も近年微増傾向にあり、外国人労働者とともに、より一層の安全教育の推進が求められていると言えるでしょう。

外国人労働者の安全教育に関する課題

とはいえ外国人労働者に対して適切な安全教育を実施する上で、課題が存在するのも事実です。

外国人労働者には日本語レベルと労働慣行の未認知に起因する課題が存在します。

日本語レベルに起因する課題

来日してくる外国人労働者は当然日本語を学んでいますが、全く問題なくコミュニケーションが取れるかと言えば、正直難しいというケースもあります。

そんな中、外国人労働者が不安全な行動を取った際の指導を的確に実施することは難しいのです。

労働慣行の未認知に起因する課題

また外国人労働者は日本における労働慣行についても、熟知しているわけではありません。

日本人労働者であれば、当然注意し避けるような危険があっても、外国人労働者にはそれがわからないというケースがあるわけですね。

しかしこれらの課題があるからといって、安全教育を諦めるわけにはいきません。

それでは外国人労働者に対してはどのように対応していけばいいのでしょうか。

外国人労働者の安全衛生を確保するために行うべき対応事項

外国人労働者の安全衛生を確保するために行うべき対応事項として、厚生労働省は以下の7つの事項を定めています。

安全衛生教育の実施

安全衛生教育を実施するにあたって、外国人労働者の母国語もしくは理解できる言語、あるいは簡単な日本語や視聴覚教材を用いるなど、外国人労働者がその内容を理解できる方法によって行うことが求められます。

特に現場で使用する機械や原材料の危険性と有害性、取り扱い方法が確実に理解できるように留意することとしています。

特に、来日したばかりの方や日本語がまだ不慣れな外国人に対しては、平易な日本語を使うように意識しましょう。

労災防止のための日本語教育

外国人労働者が労働災害防止のための指示などを正確に理解することができるように、現場においても必要に応じて日本語教育を実施することが求められます。

また日本語以外にも、特定の指示を意味する合図やジェスチャーなどを決め、習得させるように努めることも推奨されているのです。

労災防止に関する標識や掲示

職場や作業場所において、労働災害防止に関する標識や掲示について、図解などを用いて外国人労働者が正確に理解できる方法で教示する必要があります。

またこれらの標識や掲示も可能な範囲において、外国人労働者の母国語や理解できる言語などを併記するといった工夫をしておくこともポイントです。

健康診断の実施

外国人労働者に対して健康診断や面接指導、心理的な負担の程度を把握するための検査を実施することも求められています。

実施に当たっては実施の目的・内容を外国人労働者の母国語や理解できる言語、簡単な日本語によって説明するように努める必要もあります。

また健康診断などの結果に基づく事後措置を実施する場合、その結果や事後措置がなぜ必要か、事後措置の内容などを同様の方法を用いて説明しなければなりません。

健康指導及び健康相談の実施

産業医や衛生管理者などを活用して、外国人労働者に対して定期的な健康指導や健康相談を行うことを推奨しています。

母性保護などに関する措置の実施

外国人労働者が女性である場合、産前産後休業の措置、妊娠中や出産後の健康管理に関する措置など、必要に応じた措置を実施することが求められます。

労働安全衛生法の周知

労働安全衛生法などの法令に基づき、その内容について周知を実施しなければなりません。

その際はわかりやすい要約資料を用意したり、外国人労働者の母国語などを用いて説明したり、理解を促進するための必要な配慮を実施するように努めることが求められます。

代表的な労働災害と対応のポイント

ここからは代表的な労働災害とそれぞれの対応のポイントについて見ていきましょう。

作業中の転倒

作業中の転倒は労働災害の中でも発生件数が多くなっており、いつどのような場所でも起こりうるため、注意する必要があります。

例えば、以下のような状況は転倒による労働災害が発生しやすい状況だと言えます。 

  • 通路や階段、出口に物を放置している
  • 床の水たまりや汚れを放置している
  • 作業靴のサイズが合っていない

転倒による労働災害の対策ポイントとしては以下の二点が挙げられます。

対策ポイント①:4Sを徹底する

4Sとは整理・整頓・清掃・清潔を表している言葉です。

具体的には作業中に歩くだろう場所に物を放置しないことや、床の汚れや水たまりを解消するなどが挙げられますね。

対策ポイント②:転倒しにくい作業方法を実施する

転倒は焦っている時などにも発生しやすいので、時間には余裕をもって行動するように心がけることが重要です。

また滑りやすい場所や足元が見にくい場所などは転倒防止などのステッカーを張り、危険であることを周知することも有効でしょう。

作業中の転落

転落による労働災害は死亡事故にも繋がる可能性が高いため、より一層注意しておく必要があります。

よくある転落による労働災害の例としては

  • はしごでバランスを崩して転落してしまった
  • はしごが倒れてしまった
  • 脚立の天板に乗って、バランスを崩した
  • 荷物を持った状態で、脚立を昇り降りして転落した

等が挙げられますね。

転落による労働災害の対策としては以下のようなポイントが挙げられます。

対策ポイント①:より安全な作業方法がないか検討する

はしごで作業をする場合、そもそも他により安全な作業方法はないかを検討することも重要です。

やむを得ずはしごで作業する場合は、誰かに支えてもらう等の工夫も必要になるでしょう。

対策ポイント②:脚立の作業は上から2段目以下を使用する

脚立で作業する場合、基本上から2段目以下を使用するようにし、決して天板に乗ったり、またがったりしないようにしましょう。

また荷物などを持った状態で利用しないというルールを設けることも重要です。

熱中症

熱中症による労働災害にも気を付けなければいけません。

転倒や転落は発生時に把握しやすいですが、熱中症の場合、危険な状態になるまで本人も気が付かない可能性があります。

そのため熱中症にならないための予防策を、職場で周知徹底することが重要になってくるのです。

対策ポイント①:水分と塩分をこまめに補給する

屋外で作業しているとどうしても水分補給などがおろそかになってしまいますが、必ずこまめに水分と塩分の両方を補給するようにしましょう。

塩分が含まれているスポーツドリンクなどがオススメです。

対策ポイント②:適宜涼しいところで休憩をとる

また適宜涼しいところで休憩を取ることも重要です。

休憩を取るタイミングをルール化し、管理者側で決まったタイミングで休憩を取るように促す等の工夫も有効でしょう。

また万が一熱中症が発生した場合は、以下の対応を取るようにしてください。

  • 涼しい場所に避難させる
  • 首やわきの下などを冷やす
  • 意識がある場合は、スポーツドリンクで水分補給させる
  • 意識がない場合は、すぐに救急車を呼ぶ

通勤時の事故

労働災害は何も職場だけで起こるとは限りません。

職場への通勤途中での事故発生も少なからずあるのです。

通勤時の事故は以下のような基本的なポイントを守ることで、大幅にリスクを下げることができるので、外国人労働者に対しても確実に周知するようにしましょう。 

  • 横断歩道がない場所は渡らない
  • 徒歩や自転車など手段を問わず、移動中は携帯電話を使用しない(ブルートゥースイヤホンも使用しない)
  • 信号を守る
  • 交差点は飛び出さない

その他のポイント

その他のポイントとしては、労働安全衛性保護具の適切な使用が挙げられます。

労働安全衛生保護具には

  • ヘルメット
  • 保護メガネ
  • 防音保護具
  • 防毒・防じんマスク
  • 手袋
  • 安全靴
  • ハーネス

など、様々存在します。

これらの保護具を装着すべきタイミングと場所で適切に使用することを徹底させることも、労働災害を防止したり、被害を軽減したりする上でとても重要なのです。

外国人労働者の労災が発生した際の手続き

続いて、外国人労働者の労働災害が発生した場合に取るべき手続きについて、解説していきます。

労働者死傷病報告をする

労災が発生した場合、まず最初に労働基準監督所に「労働死傷病報告」を行わなければなりません。

労災にあった社員の休業日数によって提出期限が異なるため注意が必要です。

休業日数が4日未満の場合、以下のように3ヶ月ごとにまとめて届出を行う必要があります。

  • 1〜3月
  • 4〜6月
  • 7〜9月
  • 10〜12月

また労災の発生場所が会社と異なる場所の場合は、労災が発生した現場の地域を管轄している労働基準監督署に届出を行う必要があります。

労災保険の給付申請をする

労災発生後、届出以外に労災保険の給付申請を行う必要があります。

労災に合った従業員本人か遺族が行う必要がありますが、基本的には企業が代行して行うことがほとんどです。

厚生労働省の発行している教材まとめ

最後に厚生労働省が発行している教材ページへのリンクをまとめてご紹介しておきますので、安全教育を実施する際に是非ご活用ください。

その他の教材も厚生労働省のWebページにあるので併せてご確認ください。

まとめ

今回は外国人労働者の安全教育をテーマにお話してきましたが、いかがでしたか。

是非この記事を参考に安全教育を推進していただければと思います。

また当社は外国人労働者の受け入れ体制構築のサポートを実施しており、安全衛生教育における日本語教育支援なども対応可能ですので、もしご興味ありましたらお気軽にご相談ください。

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監修者
編集
中村 大介
1985年兵庫県神戸市生まれ。2008年に近畿大学卒業後、フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業に入社し、新規事業開発に従事。2015年、スタートアップを共同創業。取締役として外国人労働者の求人サービスを複数立上げやシステム開発を主導。海外の学校や送り出し機関との太いパイプを活用し、ベトナム、インドネシア、タイ、ミャンマー、バングラデシュの人材、累計3000名以上の採用に携わり99.5%の達成率にて、クライアント企業の事業計画の推進に成功。このノウハウを活かし、パフォーマンスを倍加させた新しいシステムを活用し、国内在住の外国人材の就職の課題を解決すべく2021年に株式会社ジンザイベースを創業。趣味はキャンプとゴルフ。
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