特定技能における航空分野の概要
特定技能における航空分野の概要について確認していきます。
特定技能「航空」は、航空業界のさまざまな業務に従事する外国人に与えられる在留資格です。この制度は、特に人手不足が深刻な航空業界において、即戦力となる人材の確保を目的として設けられています。
ここでは、航空業界の現状や特定技能を利用する目的、また受け入れ要件などを詳しく見ていくことにしましょう。
航空業界の現状
特定技能の対象となっていることから、航空業界においても人手不足が慢性化している状況と言えます。
特定技能の創設前である2017年時点での、航空業界における主な職種の有効求人倍率を見てみましょう。
・陸上荷役・運搬作業員:4.97倍
・分類できない輸送の職業:2.17倍
・輸送用機械器具整備・修理工:2.00倍
このデータは国土交通省が発行している「航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」から抜粋しているもので、軒並み高い有効求人倍率になっていることがご理解いただけると思います。
またこの状況のまま何の対策もせずにいれば、2023年には8,000人程度の人手不足が生じると見込まれ、この状況を解消する為に外国人労働者の受け入れを促進していくことになったのです。
今後、日本国内においても特定技能「航空」を活用した雇用政策が推進され、業界全体の質の向上と人手不足の解消が図られることが期待されています。これにより、外国人材の受け入れが航空業界の新たな可能性を広げる要因となるでしょう。
従事できる業務
航空分野の特定技能外国人が従事できる業務としては、大きく2つのカテゴリーに属するものとなります。
空港グランドハンドリング業務
- 航空機地上走行支援業務:航空機の駐機場への誘導など
- 手荷物・貨物取扱業務:手荷物や貨物の仕分けなど
- 手荷物・貨物の搭降載取扱業務:手荷物・貨物の航空機への移送など
- 航空機内外の清掃整備業務:客室内清掃や遺失物の検索、機体の洗浄など
空港グランドハンドリング業務は、航空機が到着してから出発するまでの間に行われる一連の重要な地上支援作業です。この業務は、航空機の安全かつ迅速な運航を確保するために欠かせないものであり、特に外国人材の受け入れが求められています。
特定技能「航空」制度を利用することで、必要なスキルを持つ人材を効率よく確保し、業務の質を向上させることが期待されています。
航空機整備業務
- 運航整備:空港に到着した航空機に対して、次のフライトまでに行う整備
- 機体整備:定期的に行う機体整備
- 装備品・原動機整備:脚部や動翼、計器類、エンジンなどの整備
特定技能「航空」においては、専門知識や技術を持った外国人が参画することで、航空機整備業務の質がさらに向上し、航空業界全体の安全性が強化されると考えられています。
雇用形態・報酬
航空分野における特定技能外国人が従事できる業務を確認したところで、雇用形態と報酬についても押さえておきましょう。
雇用形態については直接雇用が原則となっており、派遣社員としての受け入れはできません。
報酬については同等業務に従事している日本人社員と同額以上の報酬を支払う必要があり、それを下回る報酬額では雇用することができません。
この方針は、外国人材のモチベーションを高めるだけでなく、企業内での公平性を保つことにもつながります。さらに、航空業界においては、特定技能外国人が高度な専門知識や技術を持っていることから、日本人社員との連携を強化し、より高品質なサービスの提供が可能になるでしょう。
雇用できる期間
航空分野において特定技能外国人を雇用できる期間には、現状上限があります。
航空分野では現状特定技能1号でのみ受け入れが可能となっており、特定技能1号には在留期間の通算上限として5年が設けられているのです。
そのため企業側や外国人労働者側がどれだけ望んでも、5年を超えて雇用することはできません。
ただし、現在在留期間の通算上限がない特定技能2号の対象分野の拡大が検討されており、将来的に航空分野も対象になってくる可能性はあります。
そうなると5年を超えて雇用することも可能になるでしょう。
受け入れ人数
航空分野における特定技能外国人の受け入れ人数について、航空分野全体で2019年から5年間で2,200人受け入れるという目標が設けられていましたが、2023年12月末時点での航空分野における受け入れ人数は1300人となっており、目標値に対して約60%達成されたとされています。
この目標人数は分野全体での上限とされていますが、企業ごとに受け入れ人数の上限は現在のところ設けられていません。 そのため、特定技能外国人を1社で何名でも雇用できるようになっています。
今後、訪日外国人旅行者の増加が予想される中、航空業界の需要はさらに高まることが考えられますので、特定技能外国人の受け入れ人数も増加していく可能性があります。2024年から5年間で4,400人受け入れるという目標が設けられています。
特定技能外国人を雇用する際の費用目安
概要の最後に特定技能外国人を雇用する際の費用目安について、確認しておきましょう。 その他、特定技能外国人を雇用する際にかかる費用としては、以下のようなものが存在します。
特定技能外国人を雇用するまでにかかる費用
特定技能外国人を雇用するまでにかかる費用は、さまざまな要素から成り立っていて、基本的には以下の3つから成り立っています。
- 海外から呼び寄せる場合に必要な送り出し機関への手数料
新たに呼び寄せる場合は、送り出し機関を通さなければいけません。 - 人材紹介への手数料
紹介手数料は、年収の◯◯%というところもあれば、単純に1名あたり◯◯円といったケースもございます。 - 在留資格申請に関する委託費用
在留資格「特定技能」を取得するため、出入国管理庁へ申請する必要があります。
書類の作成及び申請取次を行政書士法人・登録支援機関に委託する際に発生する費用となります。
海外から呼び寄せる場合には、送り出し機関への手数料が必要です。この手数料は、機関によって異なりますが、一般的に数十万円程度となります。また、新たに呼び寄せる場合は、送り出し機関を通さなければなりませんので、その際の手数料が発生します。
特定技能外国人の雇用開始後にかかる費用
特定技能外国人の雇用開始後にかかる費用
- 登録支援機関への支援委託費用
就労開始後に発生する費用です。
特定技能人材への義務的支援を登録支援機関に委託した場合に、1名単位で発生してきます。 - 在留資格更新申請に関する委託費用
在留許可を受けたとしても、1年に1度在留期間更新のため、出入国管理庁へ更新申請する必要があります。
具体的な費用イメージとしては、一般的に数万円程度が想定されますが、送り出し機関や人材紹介会社、登録支援機関によって変動します。したがって、企業はこれらの費用を予算に織り込んで計画を立てることが重要です。
各費用イメージ
- 送り出し機関への手数料:20~40万円(海外から呼び寄せる場合)
- 人材紹介会社への手数料:30〜90万円(年収の10〜30%-理論年収300万円想定)
- 在留資格申請に関する委託費:10~20万円
- 登録支援機関への支援委託費:年間24~36万円(一人当たり2~3万円/月)
- 在留資格更新申請に関する委託費:5万円〜15万円
▶︎【特定技能外国人の受け入れ費用まとめ】費用相場もあわせて紹介
航空分野における特定技能の在留資格を取得するには
ここからは航空分野における特定技能の在留資格を取得するための条件について、ご紹介していきます。
特定技能評価試験をクリアする
一つ目の条件は、特定技能評価試験をクリアするという点です。技能試験とは、特定産業分野における知識や技能を有しているかを判断する試験です。特定技能評価試験には、各特定分野における技能を計測するための技能試験と、日本語能力試験の2種類存在しています。
それぞれ見ていきましょう。
技能試験
航空分野の技能試験については、公益社団法人日本航空技術協会が運営しています。筆記試験及び実技試験で構成されています。筆記試験に関しては、「航空機の基本技術」「作業安全」「航空機概要」の3分野から出題されます。実技試験に関しては、「締結」「電気計測」の2分野において、実務能力を有しているかを確認する試験となっています。
以下簡単ではございますが、試験の概要になりますので、ご確認ください。
- 方式:筆記試験(1時間、30問)+実技試験(30分、1〜3問)
学科試験は真偽法、実技試験は実際に作業を行います。 - 実施場所:国内+国外(未定)
- 開催頻度:未定
- 試験のサンプル
学科・実技それぞれの正答率が65%以上で合格となります。
申込方法等の試験詳細は公益社団法人日本航空技術協会のHPも併せてご確認ください。
日本語能力試験
日本語能力試験は以下の2つの内いずれかを受け、それぞれ設けられた合格基準に達する必要があります。
- 日本語能力試験JLPT
国際交流基金と日本国際教育支援協会が設立した日本語試験であり、特定技能においてはN4以上に合格することが求められます。
詳細は日本語能力試験公式HPをご確認ください。 - 国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basic
国際交流基金が主催する日本語試験で、特定技能の在留資格を取得するには、A2レベル以上に合格する必要があります。
詳細については国際交流基金日本語基礎テスト公式HPを併せてご参照ください。
技能実習2号を良好に修了
もう一つの条件が技能実習2号を良好に修了するというものです。
技能実習2号を良好に修了している場合、技能試験と日本語能力試験は免除となり、在留資格変更許可申請を実施すれば、特定技能の在留資格を取得することができます。
ただし試験が免除されるのは航空分野で技能実習2号を修了している場合に限り、他分野で技能実習2号を修了していても免除となりません。
このため、航空業界での技能実習生を目指す外国人にとっては、航空分野に特化した実習を行うことが、特定技能資格を取得するための重要なステップとなります。
また、技能実習を通じて得た経験や知識は、日本国内での業務において非常に大きな価値を持ちます。 技能実習が修了した後、特に実務経験を活かした仕事に就くことで、更なるスキルアップが期待できるのです。
このように、技能実習2号を良好に修了し、特定技能資格へと移行する道は、外国人にとって魅力的なキャリアパスを築く一助となるでしょう。
航空分野で特定技能外国人を受け入れるには
続いて航空分野で特定技能外国人を受け入れる際に、企業側に求められる基準などについてお話していきましょう。
受け入れ機関としての基準を満たす
まずご紹介するのは受け入れ機関として満たすべき基準です。この基準は航空分野に限らず、全産業分野共通のものとなっています。具体的な基準としては以下の通りです。
支援体制に関する基準に関しては、満たすことができなかった場合、登録支援機関に委託することで、基準を満たしたとみなされます。そのため、特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関の活用もぜひご検討してみてください。
登録支援機関については、以下の記事に詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
▶︎【特定技能制度における支援とは】登録支援機関や支援にかかる費用まで解説
航空分野特有の要件を満たす
もう一つが航空分野特有の要件を満たすということです。航空分野で特定技能外国人を受け入れるには、以下の5つの要件を満たす必要があります。
- 空港管理者により空港管理規則に基づく当該空港における営業の承認等を受けた事業者、もしくは航空運送事業者又は航空法に基づき国土交通大臣の認定を受けた航空機整備等に係る事業場を有する事業者、もしくは当該事業者から業務の委託を受ける事業者であること。
- 国土交通省が設置する「航空分野特定技能協議会」の構成員になること。
- 協議会に対し、必要な協力を行うこと。
- 国土交通省またはその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。
- 登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合、先の要件②~④を全て満たした登録支援機関に委託すること。
これらの要件をクリアすることで、企業は特定技能外国人を受け入れる資格を得られ、航空業界に必要な人材を確保する助けになります。
特に、航空分野においては安全性や規則の遵守が極めて重要であり、受け入れ機関は法令に基づく運用を徹底する義務があります。
航空分野における特定技能外国人の受け入れの流れ
最後に航空分野で特定技能外国人を受け入れる際の流れについて確認していきましょう。
受け入れまでの流れ
特定技能外国人を受け入れる際の流れとしては、基本的に以下のような形になります。
- ステップ①:人材募集・面接
- ステップ②:特定技能雇用契約の締結
- ステップ③:1号特定技能支援計画の策定
- ステップ④:在留資格認定・変更申請
- ステップ⑤:就業開始
- ステップ⑥:航空分野特定技能協議会へ加入
ステップ③の1号特定技能支援計画の策定とその計画に基づく支援業務は、先述の要件を満たした登録支援機関へ委託することができます。
またステップ⑥協議会への加入は、業界全体の基準を満たし、地域や企業のニーズに応じた新たな人材資源を確保するための大切なステップです、また特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に実施する必要があるので注意しましょう。
受け入れに必要な書類
特定技能外国人を受け入れる場合、先述の通り在留資格に関する諸申請と協議会への加入手続きが必要となります。各手続きの詳細が記載されているページを以下にご紹介しておきますので、併せてご確認ください。
海外から呼び寄せるケース
海外から呼び寄せる場合、特定技能外国人が必要な手続きをしっかりと進めることが求められます。
まず、在留資格認定証明書を取得するための申請を行う必要があります。これは、特定技能外国人に対して必要な資格や基準を証明できる重要な書類です。この証明書を取得することで、外国人労働者は日本への入国が可能となります。
詳しい書類に関しましてはこちらをご参考ください。
国内に在留している外国人労働者を受け入れるケース
国内に在留している外国人労働者を受け入れるケースでは、現在の在留資格に基づいて特定技能への変更申請が必要です。特定技能に変更するためには、外国人労働者が満たすべき条件や要件をクリアする必要があります。
特定技能評価試験に合格していることや、日本語能力試験の基準を満たしていることが求められます。また、既に状況にある在留資格が特定技能1号または2号に該当するかを確認することも重要です。
現在の在留資格が適切なものであるかを事前に確認し、必要な手続きを速やかに進めることで、スムーズに特定技能への移行が可能となります。
詳しい書類に関しましてはこちらをご参考ください。
協議会への加入
航空分野で特定技能外国人を受け入れる場合、企業は「航空分野特定技能協議会」への加入が求められます。この協議会は、航空業界の企業が外国人材を適切に受け入れるための基準やガイドラインを策定し、業界全体の調和を図る役割を果たしています。
詳しい書類に関しましてはこちらをご参考ください。
航空分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」) - 国土交通省
特定技能「航空」に関するFAQ
特定技能外国人を受け入れる際の具体的な条件や採用方法に関する疑問にお答えしていますので、以下ご参考ください。
特定技能「航空」の雇用条件は他の産業分野と異なる点がありますか?
航空分野では、勤務時間や業務の特性上、不規則な勤務体系(早朝・深夜勤務など)が求められることがあります。また、勤務地が空港となるため、特定の地域での勤務が多く、通勤条件や住居の手配が重要な課題となります。雇用契約書には勤務条件が明記される必要があり、同業務に従事する日本人労働者と同等以上の待遇が求められます
特定技能「航空」で働く際の日本語能力の実務面での要求はどの程度ですか?
日本語能力試験(JLPT)N4相当の日本語力が基本条件とされていますが、実務では以下のような場面で高い日本語力が求められることがあります:
- お客様への案内や問い合わせ対応(旅客サービス業務)
- 業務マニュアルの理解(安全基準や作業手順など)
- 緊急時の報告や連絡の正確さ
現場では、特にコミュニケーション能力や専門用語の理解が重要となります。そのため、業務中に使う日本語を補強するためのトレーニングが提供される場合もあります。
どのような経路で特定技能外国人を採用することができるのか?
特定技能外国人を採用する経路はいくつか存在します。まず、企業が直接募集を行う方法が一般的です。また、登録支援機関を通じての採用も考慮することができ、特定技能外国人の適切なサポートを受けることが可能です。さらに、技能実習からの転換を利用することで、既に日本にいる外国人材の活用も目指せます。これにより、企業は多様な人材を確保し、特定技能の活用を促進することができます。
まとめ
今回は特定技能の中でも航空分野にフォーカスしてお話してきましたが、いかがでしたか。
特定技能「航空」を通じて外国人材を受け入れることは、航空業界の人手不足解消に直結します。この制度を利用することで、企業は即戦力となる人材を確保し、業務の効率化を図ることが期待されています。
当社は本文中でも紹介した登録支援機関として活動しており、支援計画の策定から実施に至るまで代行させていただいております。また特定技能外国人の人材紹介サービスや就業開始後の定着支援に至るまで、外国人労働者の雇用を一貫してサポートしておりますので、少しでもご興味ありましたらお気軽にご連絡ください。